バームクーヘン豚という滋賀で育った奇妙なポークを知っているだろうか。
「滋賀ってのは琵琶湖のほかに何があるんだい?」という煽り文句に対して私たち滋賀県民はなすすべがない。バカにされているだろうことはわかっていても、パッと滋賀の良さを思いつくことが難しいのだ。
ただ、「滋賀でなにか良いおみやげはない?」という質問に対してはわりとスグに回答できる。滋賀のお菓子といえば、たねやのバームクーヘン。関西の百貨店に行けばどこでも店を構えているほどに有名だ。
なんとその滋賀の有名菓子を食っている豚がいる。既婚男性を寝取ろうとする女性を比喩したメス豚といったものではなく、正真正銘のあのピンクの豚だ。それがバームクーヘン豚なのだ。
そんな贅沢な食生活をしている豚を、こともあろうかジャンクフードの代表格である”ラーメン”のチャーシューとして贅沢に使ってしまっている店がある。それが今回行くことになった「くらお」であった。
野洲くらおへ
予め断っておく。くらおは特別うまいというわけではない。奥さんは知り合いの女性からは「あそこはそうでもないよね」と言われてしまったそうだ。
だけどくらおには不思議な魅力がある。同じ店に2回以上行くことが少ない私たち夫婦が、くらおにはすでに4回は行っている。不思議な魅力以外に、「近い」という実用的な理由もあるのだが。
今回は1ヶ月になった息子の外食デビューも兼ねてくらおに向かった。遠出の前に近場での足慣らしである。
店内は満席であり、3組の待ちがあった。やはりそれなりに人気のお店だ。奥さんの知り合いの女性はわかってない。
29の日なのでバームクーヘン豚チャーシューが大盛り
席に着いたらメニューを一通り眺めてみる。実は今日は29日であり、肉の日キャンペーンなのだ。これを楽しみにしてやってきた。
肉の日にはチャーシュー麺の肉増量が無料になるとのことで、まずはチャーシュー麺のしょうゆを一つ。もう一つである奥さんの分はみそにした。
ほかには塩とブラックがあり、この「当店はこだわりの一品だけを提供します」という小洒落たラーメン店の真逆を行くスタイルに安心感を覚える。郊外のラーメン屋なんてのはむしろそういうのがいいんじゃないか。
注文後は机に置かれた食べ放題のキムチをつまみながら、もう一度メニューを手に取る。からあげからトンペイ焼きまで置いてあり、この何でもござれ感がとっても良い。週末にふらっと行くラーメン屋という感じがする。
届いた。運んでいる瞬間からもう「でかい…やばそう…」ということが伝わってくるフォルム。薄切りタイプのチャーシュが渦を巻いて塔を造り出している。一時期はやったローストビーフ丼のようにも見える。
通常サイズはまったくこんもりとしていない。とりあえずスープから飲もうにも、息子を前抱っこしたままなので食べづらい。そして塔を織り成した山盛りのチャーシューまでもが邪魔をしてくる。仕方なくチャーシューから食べることにした。ちょっと、冷たい…
気を取り直してチャーシューをスープに浸してから、麺を巻くようにして食べてみた。うん。うまいじゃないか。これだよこれ。安定感のある、ザ・ラーメンだ。
チャーシューにも色々あるようだ。脂身の多い部分は、トロッとしてうまい。たくさん食べちゃったらお腹に来そうだけど、たまらないなぁ。
スープをしょうゆにしたのも正解だった。背脂が浮いたスープはいつまでも温かくておいしくいただける。細い固麺は少し芯が残る程度で、ちょうどいい固さだ。
一通り食べ終わって、一度水を飲むことにした。くらおでは替え玉が無限に無料なので、今度は奥さんが注文したみそ味を食べることにした。みそもいけるなぁ。
まとめ
くらおのラーメンはやはり普通であった。ふつうに美味しい、という現代的な表現がピッタリの場所だ。最近はラーメンというとなにかと小洒落ていたり「ニンニクアブラカラメ」のようなルールが厳しいことを売りにしている店舗が話題にのぼることが多いけれど、くらおのような週末に家族で食べに行きたいラーメン屋も良いよなぁと思った。
店内には子連れがたくさんいて、広くて、お腹いっぱいになって、程よくおいしい。そして極めつけはバームクーヘン豚である。
行ったあとはいつも食べ過ぎて後悔するんだけれど、しばらくすると無性に家族で行きたくなってしまうラーメン屋、それがくらおなのかもしれない。