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【旅行記】奥歯を抜くときに出会える『Sルームの美人さん』の話

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写真はすべて関係ありません。

奥歯を抜いた時の話をさせてください。

 

憂鬱な休日

土曜の朝。休日だけど、いつも通りの時刻に目が覚めた。今日は会社は休みのはずなのに、憂鬱でしょうがない。こんなにも太陽はまぶしく輝いているのに、心のざわつきが消えてくれない。

 

今日、僕は抜歯する。

 

本当ならば一昨年の冬に抜くはずだった奥歯なのだが、『抜くのはイヤだな、怖いな』と思っているうちに二年もの時が過ぎてしまっていた。その間に結婚と二度の引っ越し(結婚は幸いにも一度ですんだ)、そして父になるという人生のビックイベントをいくつもこなしてしまった。どれだけ抜歯が恐ろしいイベントか、わかっていただけたであろうか。

 

 

そういえば『そして父になる』と言えば、私が抜歯を恐れている間にかの福山雅治も結婚している。奇しくも私と福山雅治は『私が抜歯を恐れている間に結婚した』という事実によって結ばれることになってしまったのだ。

そんなことを考えながら歯科医院の扉を開けた。診察券を出して席に座る。

 

『きょーちかさん。月初めなので健康保険証も出してくださいね』

 

・・・すみません。 

受付の人までもが怒っているように見える。全部、抜歯のせいだ。

 

Sルームの美人

朝一番の予約ということもあってか、スグに診察室へと呼ばれることになった。

だけど、何かがおかしい。

 

『はーい、きょーちかさん。今日はSルームでお願いしますね』

 

Sルーム? 聞いたこともない部屋の名前が出てきた。この歯科医院を使い始めて3年(うち2年は抜歯からの恐れで逃げ続けていたが)、それでも10回ほどは来ていることになる。その間に私が入ったのは『1,2,3ルーム』という番号が付いた部屋だけだった。

 

『Sルーム』

 

明らかにこの部屋だけがおかしい。この部屋だけが、数字じゃない。そしてアルファベットが始まる『A』でもない。きっとこの部屋名には何か意味があるはずだ。

 

Special(スペシャル)ルームだろうか。

Saturday(土曜日)ルームだろうか。

 

そんなことを考えながら歩いていると、『Sルーム』へと辿り着いた。また、何かがおかしい。他の部屋は安っぽい白い扉だったのに、この『Sルーム』だけは荘厳な木造の扉になっている。これはSpecialルームの『S』だったのだろうか。

部屋に入ってみる。明らかにいつもと違う。いつもの安っぽいディスプレイが国内メーカーの上等品に変わっており、窓にはかわいい(そして少し高そうな)お人形が飾られている。ますますSpecial感が出てきたぞ。

 

そんなとき、看護師さんが現れた。マスクをした、とびきりの美人が。 

この歯科医院に来て3年になるが、こんな美人は今まで一度も見たことがない。

 

そのとき私は確信したのだ。この部屋は、『Sukebeルーム』であったのだと。

 

『S』の真実

それからの出来事はまるで夢のようだった。

とびきりの美人は『今日は体調はどうですか? お身体の具合はどうですか?』とやたらに私の身体を気遣ってくれるところから始まり、口の中を麻酔責めにしてきた。そして目隠しプレイが始まったかと思えば、今度は別の男(おそらく院長だ)が口の中でチェーンソーみたいな音を出して歯を削り始めた。

 

『痛かったら左手をあげてくださいね〜』

 

なんで、右手じゃダメなんだ。麻酔責めにしてくれたおかげかまったく痛みはないのだが、音が凄まじい。よく思い浮かべるような『キィィィィィーーーン』という高い鋭い音ではなく、町工場で鉄鋼を削りだす時のような『グァァァァァーーーン』という低い音が聞こえる。

そして歯自体は痛くないのだが、力は必要なようで頭がイスに強く押し付けられるのだ。これがちょっと痛い。

 

『歯が横向いてますしね。ちょっと削っていきますしね』

 

滋賀の方言である語尾に『し』を付けた美人の声が聞こえるが、こんなに恐ろしい音が聞こえていると、『ちょっと削っていきます死ね』としか聞こえない。

このとき私は確信した。この部屋は『サディスティックルーム』であったのだと。

 

待ち時間に流れていた『風立ちぬ』で主人公が言われていた言葉がとても印象的だった。

『飛行機は戦争の道具ではない。飛行機は夢だ。飛行機を設計しろ。夢を設計するんだ』

印象に残ってはいるけれど、この話とはほとんど関係ない。

 

おわりに

歯医者というのは大人になっても怖いものです。子どもであればなおさらだと思います。そうした環境を理解してか、今回の歯医者では最も怖い抜歯を行う部屋を特別な空間に仕上げているようでした。(壮大な勘違いかも知れないけど)

空間づくりだけでなく、医療の技術の進歩も感じました。麻酔もいきなり注射をするのではなく、塗り薬での表面麻酔から始まります。こうすることによって歯茎を針で刺されてもまったく痛くないのです。歯を抜く時の痛みなんて微塵もありません。感覚すらなかったのですから。

 

ちなみに私の奥歯はかなり横向きになっていたらしく、いったん削らないといけなかったそうです。抜歯が終わってから抜かれた歯を見せてもらったのですが、キレイに真っ二つに切り離されてました。麻酔がなかったらと思ったら、おそろしくて抜歯なんてできません。

今はロキソニン(鎮痛剤)を飲んでブログを書いています。これから歯を抜く人は、麻酔をしっかりしてくれるか、そして美人がいるかを確認してみてはいかがでしょうか。ではではまた!


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